目次
エスゾピクロンとは?
エスゾピクロンとは、商品名:マイスリーとして知られる睡眠導入剤です。
非ベンゾジアゼピン系といわれますがベンゾジアゼピン受容体に作用するお薬になります。
1989年に発売されたアモバンというお薬を改良したもので、2012年に発売されました。
アモバンの有効成分ゾピクロンに含まれるS体、R体という物質のうち、薬として働くS体のみを抽出したものです。
エスゾピクロンのエスはS体のSからきていると考えられます。
エスゾピクロンの作用機序
GABAA受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位のω1サブタイプに主に作用する(ω1の選択性が高い)ことで、GABAの作用を強めます。
ゆえに、ω1サブタイプの作用である催眠鎮静作用は強いです。
しかし、ω2サブタイプの作用である抗痙攣作用、抗不安作用、筋弛緩作用が弱くなっています。
なので、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べるとふらつきなどの筋弛緩作用による副作用は弱くなっているのです。
ω1サブタイプ:催眠鎮静作用に関わる
ω2サブタイプ:抗痙攣作用、抗不安作用、筋弛緩作用に関わる
エスゾピクロンの効果
不眠症
エスゾピクロンの用法・用量
成人:1回2mg就寝前に経口投与(最大量3mg)
高齢者:1回1mg就寝前に経口投与(最大量2mg)
エスゾピクロンの重大な副作用
重大な副作用 | |
ショック・アナフィラキシー | |
依存性 | 連用により薬物依存を生じることがある。連用中の急激な減量や中止は、不安、異常な夢、悪心、胃不調、反跳性不眠等の離脱症状をきたすことがある。投与を中止する場合は徐々に減量する。 |
一過性前向性健忘・もうろう状態 | 中途覚醒した後の出来事を覚えていないといった一過性前向性健忘をきたすことがある。異常が認められたら投与を中止する。 |
呼吸抑制 | 呼吸機能が低下している患者ではCO2ナルコーシスをきたすことがある。 |
肝機能障害 | AST、ALT、γGTP、ALPの上昇を伴う肝機能障害、黄疸をきたすことがある。 |
精神症状、意識障害 | 悪夢、意識レベル低下、興奮、錯乱、幻覚、夢遊症状、攻撃性、せん妄、異常行動等の精神症状及び意識障害があらわれることがある。見られたら投与を中止する。 |
エスゾピクロンの主な副作用ランキング
主な副作用 | 頻度 | |
1位 | 味覚異常(苦味) | 21.0% |
2位 | 頭痛 | 10.7% |
3位 | 傾眠 | 7.8% |
4位 | 浮動性めまい | 5.1% |
※外国並行群間比較試験による
エスゾピクロンの副作用は、苦味が特徴的です。
服用後しばらくした後から翌朝まで口の中に苦味を感じます。
しかし、改良前のアモバンよりは、エスゾピクロンは苦味の副作用は弱くなっています。
苦味は21.0%の方に見られており、もっとも多い副作用です。
2位は頭痛で10.7%の方に見られました。
3位は傾眠。エスゾピクロンの催眠作用によるものだと思われます。
4位の浮動性めまいとは、ふわふわしためまいのことです。
エスゾピクロンで苦味の副作用がおこる理由
エスゾピクロンを服用すると、服用後から翌朝まで口の中に苦味を感じることがあります。
これは、血中に吸収された薬剤が唾液から分泌されたり、ルネスタが肝臓で代謝された後の物質が唾液から分泌されることが原因と考えられています。
エスゾピクロンをアルコールと一緒に服用してはいけない理由
ゾルピデム(マイスリー)と同様に、エスゾピクロンもアルコールと一緒に服用してはいけません。
アルコールもエスゾピクロンと同様に、GABA受容体に作用するため、お互いに作用を強めてしまうからです。
エスゾピクロンの禁忌
重症筋無力症:筋弛緩作用により症状が増悪するから
急性閉塞隅角緑内障:抗コリン作用により眼圧が上昇するから
呼吸機能が高度に低下している患者:CO2ナルコーシスを起こしやすい
エスゾピクロンの作用時間
エスゾピクロンは1時間程度で最高血中濃度に達して、5時間ごとに半分の濃度になります。(半減期は5時間程度)
作用時間が早いため、超短時間作用型に分類されており、入眠障害(寝つきが悪い人)に有効です。
エスゾピクロンとゾルピデムの効果の違い
エスゾピクロンとゾルピデムは共に非ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬です。
作用機序も同じです。どちらも超短時間型であり、作用までの時間もあまり変わりありません。
エスゾピクロンとゾルピデムの違いは、半減期と副作用にあります。
ゾルピデムの半減期は2時間なのに対して、エスゾピクロンは5時間です。
つまり、エスゾピクロンの方が催眠作用が長く続きます。
よって、どちらも入眠障害に対して有効であるのは同じですが、エスゾピクロンの場合は入眠障害だけでなく中途覚醒にも効果があります。
【ルネスタ】 中途覚醒に対する効果を教えてください。
成人不眠症患者にLUN2㎎、3㎎、高齢不眠症患者にLUN1㎎、2㎎を長期投与(1日1回就寝前、24週間投与)し、「中途覚醒回数」を検討したところ、各群において投与前2回が投与後は1回となり有意に回数が減少しました(1標本t検定 P<0.001)。
また、同様に「中途覚醒時間」を検討したところ、各群において、投与前に比べ有意に時間が短縮されました(1標本t検定 P<0.001)。
エスゾピクロンとゾルピデムの副作用の違い
エスゾピクロン(ルネスタ)には、苦味の副作用がありますが、ゾルピデム(マイスリー)にはありません。
作用機序は同じなので、依存、前向性健忘、離脱症状、肝機能障害、呼吸抑制といった副作用は共通して見られます。
エスゾピクロンとゾルピデムの使い分け
入眠障害のみの場合、エスゾピクロンとゾルピデムどちらでもいいでしょう。
しかし、中途覚醒も伴う場合は、半減期が長く中途覚醒にも効果があるエスゾピクロンを使うべきだと思われます。
しかし、エスゾピクロンには苦味の副作用があるので、許容できればということになるでしょう。
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