動脈血ガスを読む上で、必要な知識や考え方をまとめる。
目次
動脈血ガスの基準値
まず動脈血ガスの基準値を覚える。
動脈血ガスの項目 | 基準値 |
pH | 7.35-7.45 |
PaCO2 | 35-45 Torr |
PaO2 | 80-100 Torr |
HCO3 | 24±2(22-26 )mEq/L |
アニオンギャップ | 12±2(10-14) mEq/L |
動脈血ガスの読み方
① pHからアシデミアかアルカレミアを判定する
pH>7.45・・・アルカレミア
pH<7.35・・・アシデミア
② ①の病態が呼吸性によるか代謝性によるかを考える
PaCO2とHCO3で①の病態の原因になっている方がどちらかを考える。
PaCO2が原因・・・呼吸性
HCO3が原因・・・代謝性
③アニオンギャップ(AG)を計算する
出典:http://www.ichikarakango.net/archives/8515605.html
アニオンギャップ=Naー(Cl+HCO3)
アニオンギャップは代謝性アシドーシスの鑑別に有用である。
アニオンギャップが開大していれば、代謝性アシドーシスがあるといえる。
アニオンギャップ開大がなぜ代謝性アシドーシスを意味するかはこちら。
AGとは?
通常測定されない陰イオン。
硫酸イオン(HSO4−)、硝酸イオン(NO3− ),乳酸イオン(CH3CH(OH)COO−),ケトン体などのアシドーシスをきたす原因のこと。
③−2 代謝性アシドーシスがあれば補正HCO3-を計算する|補足が必要
アニオンギャップが増えた分だけ、HCO3ーは低下する。
そのため、アニオンギャップの変化量から本来のHCO3ーを計算できる。
例えば、補正HCO3ーが高ければ、代謝性アルカローシスが合併しているといえる。
(補正HCO3-) = (測定HCO3-)+ΔAG
ΔAG = AG - 12
④ 代償性変化が生理的範囲内か、混合性障害を合併しているかを考える
代償性変化の範囲を求め、代償範囲を超えた変化が認められれば、複数の病態が合併している可能性を考える。
代償性変化が計算式で求めた範囲内なら生理的範囲内と考える。
代償性変化の範囲は以下のように計算する。
※⊿PaCO2は基準値の中央値40との差
※⊿HCO3は基準値の中央値24との差
出典:http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/kid/resident/clinicallecture4.html
⑤ 血液ガス所見と他のデータを総合的に理解、診断する
血液ガス所見、現病歴、身体所見、検査所見を総合し、最終的な病態生理を理解、診断する
トレーニング
練習1
pH = 7.32, Pco2 = 28, HCO3- =14, Na+ = 140, K+= 5.0, Cl- = 104
※慢性腎不全の患者:クレアチニン 11mg/dl
①アシデミア
pHが7.35未満だから
②代謝性アシドーシス
アシドーシスとなる原因はHCO3ーの低下によるから
③AG=140ー(104+14)=22なので、AGは高い
補正HCO3-=14+10=24なので、代謝性アルカローシスの合併はない。
④PaCO2の生理的代償範囲は、ΔHCO3ー×1~1.3=10~13
ΔPaCO2=40-28=12
よって、PaCO2は生理的代償範囲内である
⑤慢性腎不全患者なので、腎機能低下による酸排泄障害による代謝性アシドーシスと考えられる
練習2
10歳代後半女性
主訴 嘔吐
現病歴 来院2日前からの頻回の嘔吐あり。それ以前から食欲低下を認めていた。
来院時バイタルサイン 体温 37.1℃、血圧 96/44mmHg、心拍数 113回/分、整、呼吸数21回/分、SpO2 100%(Room air)
血液ガス所見 Na 129 mEq/L、K 2.4 mEq/L、Cl 87 mEq/L、
pH 7.70、PaCO2 13 mmHg、PaO2 74.2 mmHg、HCO3- 16.9 mEq/L
①アルカレミア
②呼吸性アルカローシス
③AG=25.1
補正HCO3=30なので、代謝性アルカローシスも合併している
④ΔHCO3=27×0.2=5.4
ΔHCO3は7なので、代謝性アシドーシスによる生理的代償を超えている
よって、代謝性アシドーシスも合併している
⑤頻回の嘔吐による代謝性アルカローシスと過呼吸による呼吸性アルカローシス、さらにショックから急性腎不全が起こり、酸排泄が障害され、代謝性アシドーシスが起こっていると考えられる。
練習3
症例 30歳代男性
主訴 嘔吐、全身倦怠感
現病歴 東南アジア旅行から帰国後に症状発現
血液ガス所見 Na 146 mEq/L、Cl 98 mEq/L、
pH 7.50、PaCO2 49 mmHg、PaO2 80 mmHg、HCO3- 38 mEq/L
①アルカレミア
②代謝性アルカローシス
③AG=10で正常
④14×0.6=8.4
ΔPaCO2=9
なので、生理的代償を0.6超えている
⑤嘔吐による代謝性アルカローシスにやや呼吸性アシドーシスを合併しているかもしれない
練習4
症例 57歳男性
主訴 悪心、嘔吐、全身倦怠感
既往歴 高血圧、糖尿病
血液ガス所見 Na 149 mEq/L、K 5.9 mEq/L、Cl 100 mEq/L、BUN 110 mg/dL、Cre 9.1 mg/dL、
pH 7.40、PaCO2 38 mmHg、PaO2 72 mmHg、HCO3- 24 mEq/L
①正常
②正常
③AG=25
代謝性アシドーシスがある
補正HCO3=37
よって、代謝性アルカローシスがある
④正常値なので、不明
⑤腎不全(Cre上昇)による代謝性アシドーシスと嘔吐による代謝性アルカローシスの合併
アニオンギャップ正常と増加の代謝性アシドーシスの疾患は?
代謝性アシドーシス、アルカローシス
呼吸性アシドーシス、アルカローシス
をきたす病態や疾患まとめる
参考文献:
https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/43_8.pdf
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/kid/resident/clinicallecture4.html
https://www.m3.com/clinical/kenshuusaizensen/544803
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