ST上昇とST低下の病態の違い
まず、ST上昇とST低下はどちらも虚血による変化であることを理解する。
ST低下 | ST上昇 | |
病態 | 心内膜下の虚血によって基線が上昇することでST部分が低下する | 貫壁性の虚血により、基線が下がることで、ST部分が上昇する |
虚血の部位 | 心内膜下 | 貫壁性 |
原因 | 冠動脈狭窄疑い | 冠動脈閉塞 |
疾患 | 狭心症 | 急性心筋梗塞 |
重症度・緊急度 | 低い | 高い |
ST上昇とST低下の病態を理解するには、知っておくべき知識がいくつかある。
まずは2点の電気に関するルールを把握する。
電気に関するルール
・電気は+からーに流れる
・電極に近づく電気は上向き、離れていく電気は下向きにふれる
心筋梗塞の経過
心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓の内膜側から起こり外膜側へと広がっていき、最終的に壁を貫いた貫壁性梗塞となる
という経過も知っておかなくてはいけない。
狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患は、心臓を養う冠動脈の動脈硬化により血管の内腔が狭くなり、血液の流れが制限されて起こります。冠動脈が閉塞すると約40分後から心臓の内膜側の心筋が壊死に陥ります。これが心筋梗塞です。
壊死は次第に心臓の外膜側へ波状に広がり6〜24時間後には貫壁性梗塞となります。 同じく冠状動脈の動脈硬化に基づく狭心症は心筋の壊死がなく、心臓本来の働きであるポンプ機能が正常に保たれているのに対し、心筋梗塞では心筋が壊死に陥ってポンプ機能が障害され、壊死が広汎に及べば心不全やショックを合併することもあります。出典:http://www.reiroukai.or.jp/trivia/%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E/
障害部位の心筋では電位が高くなる
また、障害部位の心筋では電位が高くなることも知識として必要である。
理由は、虚血となると、細胞膜のイオン交換ポンプの機能が阻害されて、 K+イオンが出にくくなることで静止膜電位が上昇するから。
4.心筋障害が起きるとどうなるのか?
虚血が悪化して心筋障害といわれる状態では、細胞膜のイオン交換ポンプの機能が阻害されます。そのため、普段の細胞の分極状態を決めている K+イオンの濃度差が減
少して K+イオンが出にくくなるため、分極が不十分になって静止膜電位が上昇します。
その結果、電位が高くなっている障害部分から、十分に分極していて電位の低い正常部分の方へ電流(障害電流)が流れ出していきます。出典:http://www.kenn.co.jp/text/ecg_naze.pdf
後は、病態を考えれば理解できる。

出典:http://www.matsuyama.jrc.or.jp/rinsyo/news/wp-content/uploads/2015/11/5f1bdb568a408ee636ceb627d6081941.pdf
心内膜に虚血が起こると、心内膜の電位が高くなるので、内膜側→外膜側へと電気が流れる。
この電流は電極に近づく向きなので、基線が上昇する。
ST部分は変化しないので、相対的にSTが下がる。
出典:http://www.matsuyama.jrc.or.jp/rinsyo/news/wp-content/uploads/2015/11/5f1bdb568a408ee636ceb627d6081941.pdf
貫壁性虚血では、障害部位から正常な部分に向かって電気が流れる。
この電流の向きは電極から離れる方向なので、基線は低下する。
ST部分は変わらないので、STは相対的に上昇する。

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