分娩時の大量出血の鑑別
産褥期の出血の原因 | 病態 | 疼痛の有無 | 子宮収縮 | 治療 |
頚管裂傷 | 胎児の通過によって、子宮の出口である頸管が裂けること | ×(分娩後の頸管は感覚が鈍くなっているから) | 良好 | 縫合 |
子宮内反症 | 子宮内膜面を外方に反転した状態。子宮底が陥没または下垂内反し、時には子宮内壁が腟内もしくは外陰に露出する。 出典:※ | ◎(腹膜が引っ張られるから) | 不良 | 全身麻酔で用手的整復 用手的整復が困難: 手術的整復(ハンチントン手術) 整復後: 子宮収縮薬(子宮が弛緩していると再発しやすいから) |
子宮破裂 | 分娩時に起こる子宮の裂傷 | ◎→△(裂傷による) | 不良 | 開腹し縫合 止血困難な場合: 子宮摘出術 |
産褥子宮内膜炎(産褥熱) | 子宮内へ細菌が入り、子宮内膜に炎症が起こる | ○(炎症による) | 不良 | 抗菌薬 遺残あり: 子宮内容除去術 |
胎盤遺残 | 分娩後30分以上たっても、胎盤の一部が子宮の中に残って出てこない状態 | × | 不良 | 可能であれば: 子宮内容除去術 |
弛緩出血 | 通常、胎盤が剥がれた部位の子宮の血管は、子宮筋の収縮によって圧迫され、出血が止まる。しかし、胎盤娩出後も、子宮の収縮が不十分なために出血が続く。 | ×(子宮が収縮しないだけだから) | 不良 | 子宮収縮薬 子宮体部マッサージ、双手圧迫法(体外から圧迫止血) これらが無効の場合: 子宮腔内バルーン挿入で圧迫止血 |
疼痛がある3つ(子宮内反症、子宮破裂、産褥子宮内膜炎)を覚える!
子宮収縮が良好なら、頚管裂傷。
頚管が裂傷するくらいなら、子宮には問題がないので、子宮は十分収縮できるから。
子宮収縮が不良なら、それ以外と考える。
強い疼痛があるのは、子宮内反症と子宮破裂。
子宮内反症は子宮がベコっと陥凹するので、腹膜が引っ張られて刺激されるので、強い腹痛をきたすと考える。
子宮破裂は、子宮が破裂するのだから、腹痛をきたすのは当たり前。
分娩第2期までは正常で、胎盤が娩出される分娩第3期以降に強い疼痛があるなら子宮内反症。
子宮破裂では、子宮口が全て開大する分娩第2期以前に過強陣痛や激しい腹痛などにより、強い疼痛をきたす。
子宮破裂は分娩中に起こるので、第2期以前に疼痛が起こると考えられる。
一方、子宮内反症は、胎児や胎盤の娩出により起こるので、第3期以降に疼痛が起こると考える。
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