尿細管障害の鑑別
ファンコーニ症候群 | バーター症候群 | ギテルマン症候群 | 遠位尿細管性アシドーシス | リドル症候群 | |
病態 | 近位尿細管が機能不全をきたし再吸収ができなくなる。 近位尿細管で再吸収されるものが尿中に排泄されるため、本来再吸収される物質は尿中で増加し、血中で低下する。 | ヘンレのループの太い上行脚にあるNa-K-2CL共輸送体の障害により、NaClの再吸収が低下し、RAA系が亢進する。 | 遠位尿細管にあるNa-Cl共輸送体遺伝子の異常により、NaとClの再吸収が低下し、RAA系が亢進する。 | 尿細管でのHCO3-の再吸収障害もしくはH+の分泌障害によって、代謝性アシドーシスをきたす | 集合管のNaK転送機構の機能の亢進により、Na再吸収とK排泄が亢進する |
症状 | 筋力低下 多尿 (低Kによる) | 筋力低下・多尿(低Kによる) テタニー(低Mgによる) | 腎石灰化 尿路結石 | 筋力低下・多尿(低Kによる) 高血圧 | |
障害部位 | 近位尿細管 | ヘンレの係蹄の太い上行脚 | 遠位尿細管 | 遠位尿細管 集合管 | 遠位尿細管 集合管 |
レニン活性 | – | ↑ | ↑ | ↓ | |
Ald | – | ↑ | ↑ | ↓ | |
血圧 | – | 正常 | 正常 | ↑ | |
K | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |
診断 | 低K 低P 低Ca 低尿酸 尿中β2MG↑ アミノ酸尿 高リン酸尿 代謝性アシドーシス(HCO3−再吸収低下による) 腎性糖尿 ※Mgは関係ない | 低K血症 低Mg血症 尿中Ca排泄低下 | アニオンギャップ正常の高Cl性代謝性アシドーシス 低K血症(例外的にアシドーシスだが、HCO3-にK+がくっついて排出される) 高Ca尿症 | ||
治療 | 原疾患の治療 原因物質の除去 アシドーシスや電解質の是正 | スピロノラクトン ACE阻害薬 インドメタシン | K、Mg補充 スピロノラクトン | アルカリ製剤の補充(代謝性アシドーシス是正のため) | 塩分制限 トリアムテレン(カリウム保持性利尿薬) ※スピロノラクトンは無効 |
合併症 | シェーグレン症候群 |
尿細管障害の部位と疾患名、病態まとめ
出典:http://bunseiri.michikusa.jp/kidney.htm
まずは、どの疾患が尿細管のどの部位によるかを覚える。
疾患 | 原因となる部位 |
ファンコーニ症候群 | 近位尿細管 |
バーター症候群 | ヘンレの係蹄の太い上行脚 |
ギテルマン症候群 | 遠位尿細管 |
遠位尿細管性アシドーシス | 遠位尿細管と集合管 |
リドル症候群 | 遠位尿細管と集合管 ※遠位尿細管性アシドーシスとリドル症候群は同じ |
腎性尿崩症 | 集合管 |
※係蹄(けいてい):動物の体の一部が入ると締め付けるくくりわなのこと
障害部位の覚え方
FBGL。
障害部位が
近位尿細管
→ヘンレの係蹄の太い上行脚
→遠位尿細管
→遠位尿細管と集合管となっていると覚える。
F:ファンコーニ、B:バーター、G:ギテルマン、L:リドル。
ファンコーニ、バーター、ギテルマンは各部位の機能障害が病態の主となっている。
しかし、リドル症候群は、ナトリウムチャネルの亢進という点で病態が異なることに注意する。
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